自筆証書遺言を弁護士が書いてみた

自筆証書遺言作成の相談や作成援助の依頼を受けることがあります。

相談では、「自分で作るのは大変ですよ。公正証書遺言がお勧めですよ。」とよく言うのですが、
実際、どれくらい大変なのか。
依頼者の方がどんな想いで遺言を書くのか依頼者の気持ちになってみようと思い試しに自筆証書遺言を自分で作ってみました。

まず、誰にどんな財産をあげるか考えます。
財産をまず調べないといけない。
これ、財産があちこちに散らばっていたら、「資料探すの面倒くさいなあ・・・やめよ。」と思うでしょうね。

また、遺言書は基本的に誰に何を上げるかということを書くんですが、なぜ、この遺言を書くかということも書きます。これは書かなくてもいいですが、書いておいた方が争いになりません。

僕の場合は依頼者の気持ちになるため、という単純なものです(笑)
ただ、普通の方は「え・・・ストレートな理由はこうやけど、これ書くと角立つからなあ・・・面倒くさ。」となるかもしれません。

あと、僕は事件処理を抱えている関係上、パソコンなどのパスワードやら暗証番号を書いておき、後の処理をこうしろということも書きます。

そして、最後に日付と住所と署名押印して・・・

あっと、大事なことを忘れてました。ここまでの遺言は全てボールペンで手書きで書いてます。
(なお、現在は、相続法改正で、財産目録は、要件さえ満たせば、ワープロで作成することも可能です。)手が少し痛くなりました。

これはご高齢の方にとっては、もしかしたら、シンドイかもしれませんね。この面からも公正証書遺言は良いですね。公正証書遺言だと手書きで書くのは署名ぐらいで、公証人に対して、こんな遺言をしたいと伝えれば公証人が遺言を作成してくれますので。

また、この遺言をどこに保管するかも考える必要があります。
保管場所を伝えておかないと遺言が忘れ去られますね。
親しい人に遺言の存在を教えておく必要があります。
公正証書遺言ですと、原本が公証役場にありますので、問い合わせさえすれば、遺言は出てきます。

改ざんが怖い場合は、封をしておくことが必要です。
ただ、隠されたらどうしようもないですね。
公正証書遺言ですと、隠せませんね。

また、私は、ササッと書きましたが、普通の方だと緊張してうっかり誤字をしてしまうこともあると思います。

誤字を押印し、訂正箇所を明示したうえで訂正する必要があります。

・・・うん、自筆証書遺言はなかなか大変ですね。

いきなり書くのは難しいですね。何度も何度も日ごろから練習して書いておく必要があると思います。遺言は何度でもいつでも書き直しができますので。
ただ、それぐらい練習しなくても公正証書遺言であれば、口頭で公証人に伝えれば良いですから。
自筆証書遺言ではなく、やはり公正証書遺言がお勧めですね。

相続人がいる場合の「特別縁故者」

相談者様「俺が面倒見てた人がこの前亡くなったんや。一緒に住んでたんやけど。」

私「はい。」

相談者様「若い時から一緒に住んでたんやけど、そいつ、急に体調悪くなったから、面倒看てくれ、金は出すからと言われたんや。

腐れ縁や思って、病院への送り迎えや家事は全部やったったわ。」

私「はい。」

相談者様「当然、俺にもその人の遺産相続できるよな。」

私「失礼ですが、あなた様は、相続人ですか?」

相談者様「いんや。あいつとは、何の繋がりもあらへん。ただの友人。」

私「それでは、亡くなった人に相続人の方がいるかお分かりになりますか。」

相談者様「相続人はおるわ。ピンピンしてる。一回、会ったことあって

定期的に連絡も取ってた。

一番最初にあいつに紹介されたとき『私達では手に負えないから〇さんに頼るしかないんです。

お願いします』って涙顔で言われてもてな。まあ、頼まれたら男気発揮せなあかんやろ。」

・・・このセリフのやり取りは架空のものです(笑)

ただ、この事例のような

相続人がいるけど、「特別縁故者」っぽい人からの相談がたまにあります。

 

この特別縁故者という制度

相続人がいない場合に亡くなった人のお世話を一生懸命やった赤の他人などに対して、

亡くなった人の財産を家庭裁判所の審判により分与するという制度です。

特別縁故者の制度は相続人がいないときにだけ使えます。

 

相続人がいれば、一生懸命お世話をした赤の他人は特別縁故者の制度は使えません。

例外的に、事務管理や準委任契約が成立していると言える場合、事務処理費用な本人のために支出した有益な費用

などについては、相続人に支払ってくれると言える場合があるかもしれません。

ただ、報酬などは発生しないのが大原則です。

 

相談者様「じゃあ、俺、やり損やないか!?それじゃあ、誰も赤の他人が助けることなんてせえへんで!

そんな、冷たい世の中でええんか!」

私「そうですね。そういうときのために遺言があるんです。遺言があれば、お世話になった人に財産を遺すことが

できますから。遺言は残ってますか。」

相談者様「遺言なんて・・・ないわ。でも俺は、あいつから目見て『お前にこの財産やる。お前には世話になったからな。』

って言われたんや!あいつの想いを0になんてしたくないんや!」

・・・これまた、架空のやり取りです。

結局、最後は遺言に頼るしかありません。

しかし、遺言を書いてもらえてないという人が多いです。

「遺言の話をすると『早く死ねと言いたいのか。』と思われるのが嫌で。」と。

しかし、遺言がなければ、亡くなった人がどんなにお世話をした人に対して、

熱い感謝の気持ちを持っていても、法的には0です。

何の価値もありません。

私は、相談を受けたときやセミナーでは、

「人はいずれ死にます。遺言を書こうが書くまいが死にます。

書いてもらえないと、あなたの財産は民法どおり相続されます。

それは、あなたの気持ちに沿った結末ですか?」と問いかけます。

遺言を書くことが「想いを受け継がせるもの」という意識が浸透して欲しいものです。

 

追記

皆様もご存知かもしれませんが、先日、相続法が改正されました。

その中で、相続人以外の者が特別に亡くなった人の財産の維持増加について特別の寄与をした人に

寄与に応じた額の金銭を請求する権利を与える制度(新法1050条)がつくられました。

相談者様「じゃあ、この制度が適用されたら、俺もいけやないか!?」

そういうわけではありません。

あくまでも、相続人以外の者のうち、「相続人の親族」であることが前提です。

これは、相続人の妻が亡くなった人の面倒を看る場合(息子の妻が息子の両親の面倒を看る場合)を救済することが

目的であることから、こういった条件が付されています。

そのため、やはり相続人がいる場合の「特別縁故者」が遺産を譲り受ける有効な方法が

遺言であることには何ら変わりはありません。

相続法改正で、自筆証書遺言もより使い勝手がよくなりましたので、ぜひ、遺言を活用してください。

 

 

2019年3月15日 | カテゴリー : 遺言 | 投稿者 : 弁護士 杉島健文